鵠沼松が岡の風景から学んだこと
藤沢・鵠沼松が岡。
ここには、明治期に別荘地として拓かれた名残が今も息づいています。
風情が感じられる玉石の擁壁と竹垣が連なる路地
クロマツの緑、玉石の石垣、竹垣の連なり。
以前、近くの分譲地を手がけた際に、売主さんからこんなお話を伺いました。
「昔は夏になると、鵠沼海岸駅までずっと木陰を歩いていけたんですよ」
ふと涼しい風が通り抜ける、その光景を想像するだけで、心が豊かな気持ちになります。
残したい。この素晴らしい景観に、できるだけ手を加えたくない。
けれど開発が避けられないのであれば、せめて街の魅力を損なわないかたちで関わっていくことはできないか。
そういう思いで、私たちはこの仕事に取り組んでいます。
鵠沼松が岡の残していきたい象徴的な風景
まちに「なじませる」ということ
既存の樹木を守り、象徴的な意匠を継承し、周辺環境に溶け込ませること。
そのまちの魅力ある景観を形成しているものを残す、活かす。
それが私たちの目指す景観づくりです。
開発とともに消えてしまうものを、どうやって残すか。私たちの挑戦はそこから始まります。
気がついたら新しい住まいが建っていた――
そのくらい自然になじんでいることが理想だと考えています。
この街並みを構成している要素に目を向け、土地の声を聞く。
例えば鵠沼松が岡でいえば、松や玉石擁壁、竹垣など、そしてそこになじんでいる建物の外壁や瓦屋根。
これらの要素を残したり再生したりすることで、景観に与える影響をできる限り小さくし、周辺環境と調和する景観づくりを目指しています。
気がついたら建っていた――そのくらい自然になじむことを目指しています。
思いを紡ぎながら
これまでも地域で景観保全に熱心に取り組む自治会の方々と、現場ごとの説明や意見交換を重ねてきました。
ときには、私たちの想いをお話しする機会をいただいたこともあります。
大切なのは、事業者だけの満足で終わらせないこと。
その地域で長く暮らしてきた方々の想いをしっかり受けとめ、未来へとつないでいくこと。
これからも、顔が見える、思いが伝わる事業を目指していきます。
このように「木を残す」という選択は、「デザイン」や「エコ」のためではありません。
その土地に流れてきた時間と記憶を、未来へと紡ぐための営みなのです。
残すべき価値とは・・・
あなたにとって残したい風景は、どんな風景でしょうか?――




